[息子が独り立ちする、と。
低く落ち着いた声で話す男に、視線を向ける。
昔はぶっきらぼうな物言いだったのが、何時からか穏やかなそれに変わったものだ。
足元に懐く、年老いた猫を膝に拾い上げながら、良かったわね、と微笑み。
続く会話の流れで、長く独り身で居る、もしくは居た理由について問われ、苦笑に変えた]
…そうね、今なら言えるかしらね。
[仮にこの時添い遂げる相手が出来ていたとしても、その相手にすら話してはいなかった理由。
けれど、彼なら笑ってくれるだろう。
共に懐かしく、あの人を偲んでくれるだろう。そう思ったから]
アタシね、ずっとシスターが好きだったのよ。
[猫の背を撫でながら、目を閉じて微笑み告げたのは、初めての告白**]