[翠が逸らされることはない。眼を細めて、たどたどしくも紡がれる、弟の声を聴いた。途切れる言葉。暫しの沈黙が下りる。先に破ったのは、エリザベートのほうだった]一度見失っちゃうと、わかんなくなるものなのよねえ。ほんとうは、すっごく単純なことのはずなのに。[苦笑。少し、顔を斜めにした]……いいんじゃない? 好きなようにしたら。[あっけらかん、と。あまりにも容易いことのように、言った]あんたの勝手さなんて、今に始まったことじゃないし。