[駆け出した先、静謐な鏡のごとき水の刃が、煌めく雫を散らし振りかざされるのは、はっきりと目に入った。こちらが動くのを待って迎え撃つように地を蹴った男の瞳もまた、深く冷たい水面を思わせる。
青白い雷の唸りを恐れる風もなく、迷いない軌道を描いてタルワールが袈裟懸けに揮われるのも予想の内、だったが>>810]
何…?!
[無手の左手が、仮面を弾き飛ばそうと揮われたのは予想外だった]
くっ!
[喚び降ろした稲妻が届く前に、フランベルジェを相手に向かって投じようという目論見は、その時点で潰え、胴を霞める冷たき刃を感じながら、身を捻って剣の柄で男の左手を打ち据えようとする。
導く先を失った稲妻が、二人の頭上で激しく爆裂したのは、その直後――――>>811]