…く、う…
[自らの喚んだ雷鳴の衝撃に弾き飛ばされ、仰向けに地面に叩き付けられた体勢のまま、仮面の男は呻く]
あいたた……
[ゆるりと半身を起こした男の僅かにずれた仮面の端、押さえた手指の間から、瞳孔の無い紅玉のような眼が覗いたのを目にした者はいたか?]
やってくれるものだ。
[すう、と、一瞬細められた紅玉は、すぐに仮面の向こうに隠され、血塗れた装束のまま、仮面紳士は立ち上がる]
私を高見の見物から引きずり降ろすだけでなく、仮面を剥ぎ取ろうとはね。
ふふ…いつになく愉しい遊びだったよ。
[マントの端を胸元に引き寄せてから、ゆっくりと優雅な一礼を、対峙した男に贈る。
次にばさりと黒いマントが翻った瞬間、切り裂かれ朱に染まっていた装束はほつれ一つない状態へと蘇り、折れたステッキすらも、元の姿に戻っていた**]