[だがその手は触れるか触れないかという位置で止まる。
一瞬怪訝な顔をするが、ユリアンの口から語られる告解を最後まで静かに聞くと]
…………そうか。
[それだけ言って少しの間目を瞑っていたが、目を開けるとじっとユリアンの眼を見つめ]
だからどうした?
いいじゃねぇか。誰だって自分が一番可愛い。
もちろん、俺だってそうさ。生き延びていたら誰かを手にかけていたかもしれない。
自分で考えてそうすべきと思ったなら、その時の自分を否定するようなこと言うんじゃねぇって。
[そう言ってにかっと笑った。]
ああ、リヒターさんならそうかもな。
だが、きっとそうだと思うぜ。
[実のところ。それは彼女の願望であるのかもしれない。
彼女をおいて姿を消した両親。彼らが自分を思ってくれていたのだと、信じたいのかもしれない。]