[銀の獣が急流に身を躍らせた後、旅人は静かに事の次第を眺めていた。獣の後を追って急流に飛び込みかねない様子のベアトリーチェにはらはらしたり、どうやら心の均衡を取り戻したらしいローザの様子に安堵したりしながら…その間も胸に開いた穴からは、赤い雫が滴り続けていた……]
泣かなくても…ああいや、泣いた方がいいのかな。
[妹の手紙を目にして、涙を零すユリアンには、困ったような顔で、そう囁いたが、相手に聞こえるはずもない]
俺が死んだのは自業自得なんだから、君らが背負う必要は無いんだよ?
[実際、もっと良いやり方があった筈だ。旅人は、彼らのように教会の仕組んだシステムに縛られていたわけではなかったのだから…ちゃんと彼らを助けようとしていれば、そう出来たかもしれないのだ。死んだ後になってそう思うのは、本当に後の祭りだけれど]