─宿屋─
なぁに、おめぇが謝ることじゃねぇ。
あれは、俺が決めたことでもある。
あの騒動が起きた当初から、ある程度の覚悟は決めてあるんだ。
[誰かを疑う覚悟。人を手にかける覚悟。その後自分がどう思われるかの覚悟。それらの覚悟は心に常にあった。頭を下げる様子にひらりと手を振る。続く軽口はこちらも軽く笑いながら]
ははは、それもそうだな。
…大概の審問では占い師も霊能者も生き残る事例が少ない。
それを考えるとちぃと難しいかも、な…。
ま、出来るだけ俺の方で食い止めてみるさ。
[ふ、と短く息を吐いてからそう言葉を紡ぐ。続く言葉は晦まされて要領を得ないが、アーベルの横で腕を組んだまま]
何に対して幸せを感じるかは人それぞれだ。
おめぇのその言い方だと誰かの幸せを危惧してるみてぇだが……おめぇが考えてる相手の幸せとそいつ本人の幸せが一致してるってぇ保証はあるのか?
そも、おめぇの幸せはどこにあるかも関わってんじゃねぇのか、それは。