―白い月明かりの下で―[噂をすれば影、とは正にこのことか。月明かりを受け、ひたり此方に歩み寄る男の姿を見とめエミリーは緊張に息を呑んだ。気安く片手を挙げ、気安く話しかけてくる金色の人狼を、内心恐れつつも精一杯の虚勢を張り] ……そうだね。 人食いの狼に出会ったら、大変だもの。 そんなことより、尻尾を掴まれるような真似は 当然、してないだろうね。[言外にライヒアルトの部屋を訪れたことを咎めながら独りの散歩のはずが、思いも寄らぬ成り行きになったと小さく溜息を吐くのだった]