[10年以上前。絵の勉強に出てきたはずの街は、私よりも才能ある者に溢れていて。自分の絵など売れやしないと、怠惰な生活を送っていた。そして遭遇した、あの悲劇の場で妻と出会った。結社員としてその場に居る者達を叱咤し、指示する妻は見るからに神経を張り詰めさせていて。支えたいと思った、心から。何度も断られて、それでも諦めずに口説いて、口説き落として所帯を持って。彼女を養う為にまた描き始めた絵も、徐々に評価されるようになって。幸せだった。何も恐るモノなどないと、思っていた。]