[素のままの疑問に紫の双眸が彷徨う。
微か眉を寄せて悩むようなそんな表情が過ぎった。
ややして小さな溜息の後、徐に口を開く]
必要とされたかったんだろうね。
[何処か他人事のように始まる言葉]
語り部見習いだった事があるんだ。
正当な後継者が出来てお役御免になったんだけどね。
元々語り部になりたかった訳じゃないけど
必要としてくれるなら、その役目を全うしたいと思ってた。
でも、勘違いだったんだよね。
代わりにもなれないんだって、あの時はちょっと落ち込んだ。
[眉を下げて苦さの残る笑みを浮かべる。
笑い飛ばせると思っていたのに初めて口にした過去は
こんなに時間がたった今でも、
心の澱として残っていたのだと改めて思わされた]