― とある日/十二年前 ―
[保父の仕事は、一人で抱えるには忙しないのだろう。見上げる背中は、家事に育児にと何時も大変そうに見えた。
子供ながらにそう解っていながら、保父に馴染めなかったのは、また置いて行かれる事が怖かったからだろうか。両親の赤い色が離れない。そうして自らの弱さに目を瞑り、大人は狡い、と決めつけて。]
……どう、しようかな。
[その日も手伝いをする事無く、地理の把握し切れぬ村の中を一人歩いていた。
途中、走って行く村の子を見て、視線を下げる。顔を伏せた儘、歩むのは黙々と。同じ年頃の子供達とも、未だ仲良く出来なかった。お父さんが居て、お母さんが居て、羨ましいと言いそうに成ってしまうから。
下げた視界に映り込んだ足元の石を、こん、と蹴ってみる。
じん、と残る余韻。爪先に走った痛みは些細なものなのに、眉が歪んで、泣きそうになった――時、]
…、ぇ……?
[旋律が、聴こえた。]