[何処まで歩いて来ていたのか。
気付けば、目の前には教会が在った。耳を澄ませると、音色はその中から続いている。一瞬だけ躊躇った後、そう、と礼拝堂の扉を押し開けて、]
…!
[途端、鮮やかに耳に流れ込んでくる、音の重なり。
目に入ったのは、ピアノに向かい合う黒髪の少年。]
――わ、ぁ…!
[上げた声は無意識。
厳かな礼拝堂の中、その光景が、音が、とても綺麗に心に響いたから。
けれど自分の声でその指が止まった事を知り、肩を跳ね上げた。]
……っ、…ごめんなさい、私、あの、
[素直に謝罪が口を突いて出たのは、音色を止めた事への罪悪感が故。
「聴いてたの?」
聞こえた問い掛けに、一つ頷いて、少年の顔を窺うように視線を上げる。]