[少しだけ空いた間に怒られるだろうかと、こくり、喉を鳴らして緊張を嚥下した。
けれど、返って来たのは思わぬ誘いで。目を見開く。]
いい、の?
[どきどきと、絶えない心臓の音は何故だろう。
けれどその時は続けられた言葉が唯嬉しくて、頬を少し上気させて、笑った。]
――うんっ、聴きたい!
[穏やかで柔らかな音色に、寂しさを忘れ、心躍らせた幼少の折。
黒と白を見据える静かな眼差しの方へ、視線が奪われるようになったのは何時からだったか。
音色を彩る、彼の心は知らない儘。
其処に流れる空気の優しさに目を閉じ、教えて貰った唄を口遊んで。
そして、その感情の名に気付くのは――。*]