[それからしばらくはエーファとして、周りの村人もアーベルやブリジットが何を言おうと両親がそういうのだから間違いないのだろうと。
数日の間にフォルカーだった自分の部屋、そこにあるものはすべて処分されていた。
エーファとして過ごしながら、時折、ルカねぇと口にすれば、両親はそれを否定するかのように]
「お姉ちゃんはもういないのよ。早く忘れなさい」
『そうだ、うちの大事な娘はエーファ一人だからな』
[両親は口をそろえて、その存在をはじめからなかったものにするように。
町にでれば、ついにエーファが外に自分からよく出るようになったと両親は喜んだ。
街中を歩くと、今まで疎むようにこちらを見ていた目や、よそよそしい態度は、
どこかいたわるように見られ、時折心配する声もかけられた。
かつてはエーファが出入りをしていた教会に足を運ぶと、そこは忙しそうにしていたが、自分は暖かく迎え入れられた。
どれもこれも、自分にはなかったものだったけども、虚構の産物でしかないもの]