─ 薄闇 ─
…、やっぱり駄目。だってズルいよ、アーベル。
私だけおばあちゃんなんて、そんなのズルい。
[泣き笑いの顔に笑みをつくって首を横に振る>>606
冗談めかして言おうとして、やはり失敗した。
間近に綺麗な蒼の双眸がある。大好きな瞳だ。
この瞳が開かなくなったのを、あの日見てしまった。
世界が色を失うのを、まざと肌に感じた。
今、空のような海のような深い色の瞳に見つめられ、
言葉を忘れて吸い込まれるように、ただ見入る。
このひとがなくては───自分はきっと、
鳥が蒼穹を失うように、飛べず闇にもがいただろう]