― 中庭・紅い薔薇の傍 ―
『ごきげんよう、アナスタシア、お久しぶりです』
[薔薇の香りの中に姿を現したのは、深紅のマントに身を包んだ、優しい面差しにハニーブロンド、濃い紫の瞳を持つ、清楚と言っても良いような、たおやかな女性]
『オリガ、ドミニカ、お久しぶり。ご面倒をかけてしまったようで、ごめんなさいね』
[笑みを浮かべ旧友に話しかける様子も優しげで穏やか。だが、言葉の端には事実を知っているのだということが窺われて、薔薇が咲いた途端に、うろうろと逃げ場を探して庭の隅に小さくなっていた彼女の息子は、びくりと更に身を縮めた]