[ふと。
微かに浮かんで消えたのは、
ノイズ混じりの、遠い過去の記憶。
初期の検体である彼女のテーマは、言霊。
言葉による、「楔」の実験。
"Emeth" とは「真実」を意味するだけでなく、古に、主の命令を遂行する人形に対して、「命」の代わりとして与えられた言葉。
頭文字の "E" を失えば "meth" となり――それは、「死」を意味する。
古来、力のある言葉を用いて、「駒」として、組織に絶対的な忠誠心を植え付け、有事には属するものの身代わりともなることを設定する。
そういった、実験の一つだった。
そして、思惑通りの進み、最終段階、
"E" の決定にまで移った時、事は起こった。]