[薄闇だった世界の帳が星空へと変わっていた。
窓の向こう、届かぬ空をじっと見詰める。
少しして携帯電話が手の内で震えた。
ピクリと指先が跳ねて急くようにメールを開く。
送り主は、春だった。
本文にはたった一つの顔文字。
一瞬、今までの全てが夢であったのかと思った。
春が狼に襲われて事切れたのも自分の見た悪夢だったのではないか。
けれど夢ではないと示すように白衣に残るのは暗い血色。
メールの送り主であるはずの春の血で己は染まっていた。
これは佑一郎が望んだ大きな奇跡ではなく
想いゆえのささやかな奇跡なのだろう。
佑一郎はぎゅっと強く携帯を握る]