[やがて、辿り着いたのは自分が育った家。
父や母は居たかもしれないが、今の自分の視界には入らなかった。
ただ目指すのは、自分の部屋。]
──……。
[毎日触れていた機織り機。その前の椅子に座るような動きをし。
そよそよと手を動かす。もう何も生むことはできない、その手で。
辛い時も悲しい時も、色とりどりの糸をくぐらせ布を織っていれば忘れられた。
そして今はただ、「自分」が完全に消え去ってしまうまでの時間を。生きていた頃と同じように機を織って、過ごす。
誰にも見えないけれど。その顔は、全てから解放されたように*微笑んでいた。*]