[傍の気配が後退るのを感じる。顔を伏せたまま、眉根が寄った。それでも、立ち上がりながらゆっくりと顔を上げる。欠けていたはずの右眼は傷付く以前のものへと戻っていた。鳶色の瞳が母子の姿を捉える]──……イレーネ。[名を呼ぶ顔に浮かぶのは僅かに眉根の寄った苦笑い]