アー……ベル……。
『俺の名前は、アーベル。よろしく』
[そう言ったのは、どこか遠い昔、同じ名前の少年が名乗ったのと同じ名前だった。
だが、追憶を振り払うように、小さくかぶりを振ると、ひらり手を振り]
おう。
待ってるよ、アーベル。
じゃ、本番頑張れ。
……アタイのようにならないようにな。
[苦笑しながら、彼の姿を見送る。
初めてであり、そして、久しぶりに告げたその名は、これからまた長く呼び続けることになるのかも知れないが、それはまた別の話になることだろう。
ひとまず、彼女の物語はこれで終わることになる]