お、俺は……まだ、成仏できないんだよ。
もう少し、ここにいるって、決めたんだ。
[足を止めた彼女の近くに寄って行った。
彼女の瞳から涙がこぼれ落ちてきたことに目を丸くする。]
ど、どうしたの?宮町さん?
あれ俺また変なこと言った……?
[また傷つけたのかとどきどきして、彼女の肩に手を置こうとしたら、「でも良かった」なんて言われて首をかしげた。
彼女の口からでた言葉は、感謝の言葉だった。
次に深く頭を下げられた。
じん、と心にあたたかいものが染みた。
一緒に階段を上ることが、彼女の口からお礼を言わせるほどのものだったのだろうか。
自分の行動が、少しでも彼女の救いになれたのだろうか。
そう思うと、アズマも救われた気持ちになった。]