[『5年だか6年くらい前だ。
入り浸ってた娼館の女が人狼で、喰われかけた。』
そこに至るまでの経緯や、彼女との関係にはまた色々とあったのだが。今はそれは語らず、結果だけを伝えた。
ただ彼女の事を語る時は、翡翠は翳り。
その女が特別だった事は友人には知れるか。
『今までは別段何ともなかったんだが。道が塞がって、あいつら…クロエとリーゼロッテの声が聞こえるようになった。
そこからだろうな。どんどんおかしくなってきてやがる。
今も。』と、仕草した後、少しの間を開けて口を開く。]
気い抜くト、ぉマぇの喉笛ニ噛み付キたくて仕方ネえ。
[そう言った後、薄く笑った口元の奥。
注視すれば犬歯が僅かに伸びており。
進行がかなり深まって来ているのは見て取れるか。
秘密を知るものを生かすなと、囁く内に逆らうように。
握る拳に自然、力が込められた。]