―鏡の前―
[ボクは再び、鏡の向こうの彼女に会っていて、それはボクの見た幻覚や、願望が現れただけの夢だったのかもしれないけどね。
いろいろあって、鏡の向こうの彼女を絵にしていた。
鏡の向こうの彼女は、シーツ一枚を手にする以外は何も着ていなくて]
じっとは、していなくてもいいよ。
多少は動いても大丈夫だから。
[ボクは鏡の向こうの彼女に、そう語りかけながら筆を滑らせる。
少しでも彼女に触れたくて、ボクはありのままの彼女を、ボクが感じるままの彼女を筆で描く。
そっと、滑らせる筆はゆるやかな曲線を描き、曲線はシーツの裏へと曖昧に隠れていく]
ありがとうね、こんなお願い、聞いてもらって。
[語りかけながら、ボクは筆の動きを止めることはない。
最後に描き終える絵は、きっと彼女にとっては美化しすぎだよと思わせるかもしれないけど、
でも、ボクにとってはそれが、ありのままに感じた、今の彼女の魅力そのものだったから**]