−宿屋−
[ナサニエルの身分を聞くまで。余所者は疑って当然、こんな時に流れ着いてきた奴が悪い――というような態度だった自警団の面々と違い。
フーゴーの言葉に、ナサニエルは表情を和らげた。]
『許しを乞われ、許したとしても。小隊長が戻ってくる訳ではありませんな』
『ル、ルーサー! 君はまたそういう誤解されそうな事を……』
[無表情のままの騎士が呟いた(というには少し声が大きいが)言葉に、慌てるナサニエル。]
『……私と、こちらのナサニエル殿下も。ダーヴィッド小隊長と同じ船に乗っていた。
もしかしたら、ここに流れ着いて殺されていたのは、私や王子殿下だったかもしれないのだ』