[髪を触る手が心地よい。
人の子と変わらぬ微笑みに、昔の己をも重ねた]
(──ああ、この子もいつか──)
[己と同じ道を辿るのだろう。
イレーネが返す言葉にその考えは強まる。
同じ道、即ち人を餌とし混沌を齎すこと。
それは己らにとって復讐と成す──]
[掠める唇に瞳を閉じ、紡がれる口伝の一説を静かに聞く。
囁かれるそれは甘く、優しく、己が中へと浸透していく。
擡げる狂気、僅かに歪められる口元。
それでも今はそれらを押さえ、瞳を細める状態で瞳を開いた]
……咲かせよ宴に相応しき華。
朱に彩られし大輪の華を──。
[そう言葉を返し。
我が子の視界を塞ぎつつ、憂いを帯びた微笑みを浮かべるイレーネに唇を*重ねた*]