――この世が塔だったら、どうするね?
[広場、噴水の前。掌を天にかざすようにして片腕を広げる姿]
この世が塔だったら……
制裁を恐れなければならない。
怒りによって分かたれる事を恐れる必要がある。
この世が塔で、崩壊したなら。
やはり恐れなければならない。
恐怖によって塔が再建される事を。
塔とは怒りの象徴であり、恐怖の象徴であり。
それ故に消える事はないのだよ。
だからこそ、この世が塔だったなら……
恐ろしい事だろう、諸君!
[辺りに大声が響き渡る。行き交う村人は一様に視線を逸らし、どこか足早に歩き去っていく。それに構う様子もなく、朗々と語る声は止まらない]