[現在より幾分前――
騒ぎが済んでから一、二ヶ月もした頃だろうか。...は再びしばしば外に出るようになった。無論、「演説」も再開した。以前と同じ――否。妄想癖や奇行はより進行しているようだったか]
そもそもこの世の始まりというのは……
ん?
[ふと袖を引いてくる手に視線を落とす。五、六歳くらいか、幼い少女が窺うように見上げてきている。周囲に親の姿はない]
「おねえちゃんは、せかいのこえが、きこえるの?」
[落ち着かない様子で問いかける少女に、ふ、と笑い]
ああ、聞こえるとも。
世界の欠片があげる音が。欠片が響かせる呼び声が。
――果たせるかな!
[微かな笑みを返す少女の頭を撫でると、歩み行く人々に向き直り。高らかに、*声をあげた*]