─ 後日 ─
うん、すごいでしょう?
[自分にとってはいつでも見られる、見慣れたはずの景色。
それでも、目を輝かせてすごいと何度も繰り返すキリルの言葉はまるで初めて見る景色のように思わせてくれた。
そんな彼女の嬉しそうな笑顔が、こちらの表情が消えるに従って強ばるのを見れば、ごめんね、と内心で思ったけれどそれは口に出さないで。
ずるい、と言われたのには、うん、と苦笑を浮かべて頷いた。]
そうだね、俺もずるいと思う。
[ごめん、とは言わない。
謝るくらいなら最初からこんなことは言わず、もっと耳障りの良い言葉で彼女を遠ざけた。
そうしなかったのは、この感情がとうに失ったはずのソレかどうか確かめたいと思ったからで。]