ゲルダ、少し外出てくるから。[手の中の箱を見せ告げてから扉を開ける。羽織っているのは黒の外套。それまでは必要でない限り絶対に袖を通さなかった色彩を今はほぼ常に纏っている。それはたまに様子を見に来る神父達への無言の抵抗でもあった]……ち。[ゲルダの前で苛立ちを見せることはない。無理をしているわけではなくて、彼女の前でだけはそれが宥められている。ただ時折、どうしても抑えられなくなるとこうして外に出るのだ。周囲の白銀が消えた、その先のことを考えるためにも]