[あの直後。再び現実の視界はあやふやなものとなった。疲労と香の影響と。両者から来るものであるのはその力を知る相手には一目瞭然で。だからかろうじて無事であった家からも出してもらえなかった]…だって他にどうすれば。[沢山怒られた。当たり前のことだが。けれど他にどんな方法を取ればいいのかなど、今も分からなくて]「…みぃ」[開けてあった窓から風に乗って、微かな微かな声が届いた]…え、あれ。コダマ。そういえば野崎さんのところは…。[旅籠の主人も、孝博も。既に居ないのだと思い出す]