[この世には居ない友からメールが来たのは一度だけだった。
幾ら待っても返事はなかった。
だから、あれが一度きりの奇跡なのだと思うことにした。
けれど、何かある度、ボクは彼にメールを送る]
『今日でボクもこの学園を卒業するんだ。
第二ボタンは春にあげるよ。』
――…なんて、要らないって言うかな。
[軽口混じりのメールを春に送る。
この学園で一番空に近い場所。
屋上の片隅に制服のボタンをこっそりと置いてゆく。
春、と呼びかけてみるけれどやはり返る声は聞こえなくて
ボクは部の後輩や幼馴染が待つ校門へと足を向けた]