[弓を引いている時間が一番落ち着くから選んだ部活。
仮令一度は人を殺めようと引いたものだとしても
結果的に命を奪うことがなかったからか
その経験はボクにとってのトラウマにはならなかった。
あの事件以来、射形が変わったと言われた。
元々きれいではあったけれどそれに鋭さが増した、と。
父には道場を継いで欲しいとも言われたけれど
ボクが目指すのは弓道場の主では無く――。
何度目かの季節が巡る。
友らの命を救えなかったボクは命を救う側の職に就いた。
優しい彼らのことだからボクのせいではないと言うだろう。
それでも、何時か彼らと再会できる日の為に――。
「先生」と看護士に呼ばれ手術室に向かう。
ボクの贖罪は、未だ、始まったばかり**]