[『両翼』で叩き落すという選択肢の不味さを
この時少女は理解していなかった。
尾が動くならば当然頭も――動くのだ。
すぐ傍で聞こえたふしゅー、という異質な吐息。
視界の端に鮮やかな色をした大蛇の咥内が映る。
咄嗟に包み込むようにして身を庇う翼、
硬質化させたそれに喰らい付く大蛇の牙。
かけられる体重に負け、膝が折れる。
翼の防壁が大蛇の唾液の熱と、こそぐような牙の動きに
がりがりと削られ欠片が散る]
やだ――やだ――っ。
[恐怖に呼応するように、内に丸まる白の外殻。
さながら、蛇に喰らわれそうな卵の如く]