[何だ?と思いながらもこのままにはしておけず。
穴の脇に膝をついて手を伸ばし、何とか引っ張り上げると、まだ産まれてさほど経っていないような小さな犬で。無事かどうか、確認しようと両手で抱え上げたら、いきなり胸元に張り付かれた。]
………ぉイ。
[そのままッァンッァン鳴きながら、子犬は離れようとしない。
尤も鳴き声は聞こえないのだが、鳴いているだろう様子は見て取れる。
引っ張っても宥めても、離れようとはしない黒い子犬に、どうしてくれようかと思いながらも。
とりあえず、飼い主を探して村のほうへと向かうことにした。
子供らと親しい友人なら、最近犬の生まれた家を知っているだろうかと。]