[目の前には革のケース。もう触れる事もないかと思っていたそれに、そっと手を伸ばした]………。[パタリと蓋が開いて飴色が姿を見せる。触れるということはこれも現実のものではないのだろうか。それでも構わなかった。弾きたいと思う気持ちの方が強かった]でも、何を弾こう。[構えて弓を持ち上げてみたけれど、弾く曲が決まらずに。音合わせを兼ねた単音が一つ、二つ、三つとバラバラに零れてゆく]