[夏の終わり近く。
もたらされたのは、父の訃報。
旅先で、事故に遭ったと。
その報せと、遺品である瑠璃のピアスと短剣を持ってきたのが自衛団長だった事。
その意味を考える余裕は当時はなかった]
……無理なんか、してない。
[父が死んだと知らされても、泣く事はしなかった。
自分よりも、母が辛そうで。そして、父は最後に、母を頼むと言ったから。
自分は我慢しないと、と。
そんな、意地のような矜持は、無理していないか、と問う声にいつもこう返させていた]
だって、俺が、母さんまもらないといけないんだから。
[いつの間にか、それは口癖になっていた。
従妹にも、伯父にも、幼馴染にも、意地を張って。
無理に明るく振る舞っていた日々が崩れたのは、十の冬]