…うん。夢じゃないね。私もちゃんと憶えてるもの。[咳き込んだ榛名の背中を、もう一度躊躇ってから、そっと擦った。以前よりもおずおずとした手つきだったけれど]私は忘れないわ。琉璃兄のことも。孝兄のことも。裕樹さんや、探偵さんや…この村に来た皆、誰のことも。[忘れられないもの、と呟いたのは風に乗ったか乗らないか]でも忘れたかったら。その方が榛姉が楽なら…。[少しだけ悲しそうな、苦い口調で続けて呟いた]