[犠牲者は沢山。失った命は戻ってこない。
それでも、全てが無くなったわけじゃなく。
諸々が終わってようやく家の前に立った時には、生きて帰ってこられた事が実感でき、胸にくるものはあった。
母は心配しているだろうかと思いながら、家の扉を開けて。]
ただいま…母さん?
[家の中が暗い。もう寝ているんだろうかと奥にいくと、母はテーブルに肘をつき顔を両手で覆っていた。]
母さん?どうかしたのか?だいじょうぶ――――
[か?と口にする前に、母は息子にすがるように抱きつき、そのままわんわんと泣き出した。
ああ、母親が泣いてる姿ってこんな胸が痛いのか、と思い知らされながら、もうずいぶん小さくなってしまった母親を抱きしめた。]
ごめん、心配かけて。
俺ちゃんと帰ってきたから。勝手に先に死んで、親不孝な事はしないからさ。…だからそんな泣かないで。
[というと、母親は嗚咽を堪えながらも泣きやんで。]