へ?
[「何言ってんの?あんた仕事で出かけてただけじゃないの。」と、怪訝そうにさくっと言った母の言葉がちょっと痛かった。
いやまぁそうなんだけど、ってか本当に人狼騒ぎの事あいつから聞いてないうえにどっからも伝わってないのかよ、とは件名にも内心だけで思って口にはしなかった。
だったら一体どうしたんだよ?と尋ねれば、母親はテーブルの上を指差した。その先には、髪が数枚散らばっている。
手に取るとそれには、普段自分とどっこいの字を書く父親が、出来うる限り丁寧にかいただろう手紙だった。]
なになに、えーと。
『愛する母さんへ。いつか言おうと思っていてずっと言えずに、結局20年もの長い月日が過ぎました。
ですがこの度、私にとってかけがえのない命が失われた事を節目とし、貴女に大切な事を伝えようかと思います。
実は私には別の家庭がありまして……………』
……………はぁーっ!?
[予想外の内容に頓狂な声を上げたら、母親はまたしくしくと泣き出したのだった。]