[手紙に書かれていた内容は、さほど多くなかった。
"屋敷と名はやるから、二度とドルージュの家に入ることを禁じる"
それと、ドルージュ家から連れていった使用人達も返すようにという指示と。
あとは、屋敷譲渡の為の事務的な内容だけが綴られていただけだった。
こう返ってくることを予想していたから、ショックは無い。
父のような立場の方達の中には好事家も多く、人狼がただの御伽噺ではないこともきっと知らないではないだろうと思っていた。
「場」に巻き込まれた娘というだけで、恐らく自分の商品価値は無くなる。
人死にを目の当たりにした、それだけでなく誰かを手にかけた可能性も高い娘など、いくら金になろうと嫁に貰いたがる者などいないから。
もう、とうの昔に自分は見捨てられたというのは既に気付いていたから、だから彼らに二度と会えないことは辛くない。
ただ、街からこの村に来て、12年間ずっと共にいてくれた彼らと別れることが、寂しくて悲しくて。
それが、余計に淋しいのかもしれないと、思った。]