― 中庭 ―
[目の前で頭を下げたレイスの姿に、ヴァンパイアの血の色の髪がゆっくりとハニーブロンドに戻っていく]
『あなたの話は聞いたことがあるわ、レイス…私には海のお友達も居るから』
[優しく言って、そっと肩に手を置く]
『あなたも、この子も同じように操られたのは知っています。でも、私はこの子の母親だから、この子が間違った時には叱らなければいけないの』
[ゆるやかに、白い指先が、セイレーンの傷ついた腕を撫でる。呪いを受けたわけではない傷であれば、強い魔力による治癒は届いたろうか?少なくとも、痛みは軽くなったろう]
『でも、そうね。それで、あなたの心が痛むのなら、少しだけお仕置きは軽くしましょう。明日の夜明けが来たら、望む姿に戻れるように』
[そう告げて、程なく、美しいヴァンパイアは、その場から姿を消したのだった。後に残るは、深紅の薔薇の香りだけだった**]