なに?[声をかけられれば、何時も通りに振り返り――近づいた顔に、一瞬の硬直。反射的にうっかりまた手に力が入ったが、ぐっと堪えて。目を閉じ、自分からも唇に近づいた。]ん…。[触れれば少し乾いた唇だと思った。味なんてしないのに、どこか甘いとも思った。触れ合った時間はずいぶん長かったのに、離れれば刹那のように思えて。顔が熱い。あんまり熱くて、緑色の目を、その人の目へと向ける事は出来なかったが。]……好きだよ、ユリアン。[届いてなかった言葉を、もう一度届けた。]