―生命の海―
[騒動の後からの何度目かの満月の夜。
生命の素はその月が昇る頃にあわせ、煌きながら天へと昇っていく。
空へと登る生命の素に誘われるように、琥珀の粒子、生命の一部、自身の片翼の成れの果ても、ふわりと空を舞い昇る。
揺らすものから与えられた力は全て消されたはずなのに、琥珀の粒子が海に映るように光るは名残のようなものだろうか。
それを全て見届けて。
口を開くのはそれらが消えて、波の音が静かに響く頃。]
…俺はお前と会って、どうしたかったのかね。
前みたく、一緒に居たかったのか。
それとも、俺を生かした事を恨みたかったのか。
あるいは…あの過去に帰りたかったのか。
[それは揺らされた瞬間、定まらなかった願い。
もう鮮やかには思い出せない遠い過去。
生かされ、彷徨い、竜となり、忘れかけていた遠い日々。
思い出せばまだ苦い。内側に巣食う澱んだものは、拭われたわけではない。
過去への思慕が消えてしまうことは、おそらくこの先ないだろう。]