本ばっかりじゃなくって、ね。[少年に合わせるような軽口めいた口調はそこまでで]…………。[途切れがちの言葉には、何一つ口を挟まず。何かを堪えるようにしてただ聞いて。記憶に刻んで。頭を下げたまま、夜闇の鳴き声に、一瞬深緑を閉じた]……っ。[次に耳に届いてきたのは青年の声で、驚きを浮かべて顔を上げた。もう、戻らないで、いってしまうのではないだろうか。そんな風にも思い始めていたから]