─雑貨屋・店内─
[宿屋前を離れたぶち猫は、散歩道を巡り、やがて、雑貨屋へと帰り着く。
にぃあ、と鳴いて尾を振る姿に、母は編み物の手を止めておいで、と手招いた]
「ひとり?
なら……大丈夫、という事かしら?」
[気まぐれなぶち猫だが、不安定なままの娘を一人放り出しはしない、と知っているからこそ。
零れるのは、こんな呟き。
やがて、その視線は丁寧にしまわれたティアラへと向けられる]
「ふふ。
怒らないであげてね、ゼル?
……あなたがあの子に遺した、もう一つのもの。
使えるかも知れないんですから、ね」
[からかうよな言葉は、彼女の亡き夫へ。
当然、返事などはないものの。
真珠のティアラは、答えるよに微かな光を*零した*]