[思ったとおり、対峙する青年は攻撃の手を緩めはしなかった。ランスが引き戻される隙に構えた左手の剣に怯む様子もなく、一気に距離を詰めて来る>>1281]
いい度胸…!
[先刻、青年を護った盾が、今度は攻撃の意図を持って雷獣に迫る。左の剣を弾き飛ばす勢いでぶつけられる重い一撃]
ウオオッ!
[瞬間、人としての姿には似つかわしくない獣のような咆哮が漏れ、盾に刃沿わせる形で受け止めた金剛の剣に稲妻のような光が奔る。けれど、それは魔力として放たれる事はなく]
ハアッ!
[全力で盾を押し返そうとしながら、地面に突き立てていた右の剣を、素早く引き抜き、盾の右下から切っ先を真っ直ぐ突き入れる。視界の外の攻撃故に、狙いは甘い。運良く下腹か、右の太腿にでも届けば幸いといった所だが、動きを鈍らせる程度の事は出来るか]