[本当は、痛みから逃れるために。
あのまま、消えてしまおうと思っていた。
真白の繁縷姫の未来を見届けて、憂いはなくなったと。
そう、思い込もうとしていたから]
……ん、確かに、かわんない、な。
けど、そうやって、お前が抱え込んで、誰か喜ぶか?
……怒られるのがオチだろ……特に、兄さんとか。
[肩を震わせながらの言葉に、ため息混じりに、言って。
好きにしていい、と言われると、翠を瞬いた]
……そっか。
それ、じゃ。
遠慮なくっ……!
[ほんの一瞬、細まる翠。
右手で握り拳を形作り、それから。
それを思いっきり──と言っても、さほどの力はないのだが──頬へ向けて、繰り出した]