―宿屋厩舎―
[口元をぐいと拭い去り、黒い獣をもう一人の幼馴染の腹の辺りに一度置き、
代わりに自身が、胸の上にそっと手を置き上に乗ると見下ろした。
喉元の深い痕、これ以外に外傷はないように思う]
……中は、食べれない、かな。
[毛に覆われた獣ではない。肌に傷をつければすぐに悟られてしまいそうで。
そも同胞の実を捥ぐのに時間をかけてしまった為、そろそろゲルダ達が戻ってきそうな気配もあり
残念そうに、まだ新しい鮮やかな血が残る首元へと顔を近づけ、
ちろと舌を出して流れる一筋を掬い取った。
幼馴染の赤い血は、上物の酒のように、深く甘く――まろやかで。
思わずごくりと喉がなる。]
……アルは美味しいね。
リヒトも少しは飲めたかな……?
[同胞は幼馴染の味を知ってから死ねただろうかと
そんな事を思いながら、吸い取るように舌で血を啜りとった。]