[闇の夢は、深い。
それは悪夢のようでもあり、普通の夢でもあったかもしれない。]
[翠の目はただそれらを眺めて、そこにあった。
目が覚めるのには、まだ先であろう。夢の先は見えない。
夢を見る目を閉ざし、ただその中に居た、時だった。]
――…!
[他者の存在に、驚き、目が開く。
どこにいるのか、誰なのか、それはすぐにわかった。]
アーベル殿!
[夢の中ならば、すぐにそこへと行ける。
彼の前へと姿を現した彼女は、闇の中に、現実よりも長い黒髪を溶かしこんでいた。]
ご無事でよかった……
[姿を見たら、安堵して。夢の中で、涙が零れる。]